1 釈放・保釈とは
釈放とは、逮捕・勾留など身体拘束を受けた被疑者がその拘束から解かれることをいいます。
他方、保釈と、逃亡のおそれがなく裁判所への出頭が確保できる等の事情があり、住居の制限や保釈保証金の納付等の条件付で、被告の身柄を解放する制度のことです。
逮捕・勾留され、そのまま起訴された場合には、勾留が継続することが一般的です(厳密にいえば「被告人勾留」「起訴後勾留」という別の手続ではあります)。
この起訴された後の勾留手続の期間制限は、捜査段階の10日間ではなく、基本的に2か月であり、継続する必要がある場合には1か月の更新がされます。
基本的には、判決が出るまで自宅へ帰ることはできないとお考えください(但し、実刑判決の場合には身柄拘束が継続します)。
起訴された場合にその勾留を争うには保釈を請求し、身柄の解放を求めていきます。保釈が認められて社会に復帰している中で、逃亡したりすると保釈保証金が没収されてしまいます。
平たく言えば、一定の条件が認められれば、保釈保証金という担保を積んで、外に出ることができるということです。
2 釈放のための活動
逮捕された場合、最大で23日間、身柄が拘束されることになります。
それだけ長期間拘束され、自宅に帰れない期間が続けば、仕事や学校に行くこともできませんし、精神的にかなりのダメージがあることは避けられません。
被疑者に家庭があったり、きちんと仕事があって、逃亡のおそれがない場合もありますし、すでに捜査機関が立証に必要な証拠を確保しているため、証拠隠滅のおそれが存在しない場合もあります。
そこで、弁護士が早期に対応することで、検察官に対して勾留しないよう求めていきます。
具体的には、被疑者の生活状況や勤務状況等を詳細かつ説得的に検察官に対して意見を述べていくのです。
それでも勾留されてしまった場合は、「準抗告」(じゅんこうこく)という手続で争います。
統計上、この勾留許可決定に対する準抗告が認められる可能性はかなり低いのが現状です。しかし、当事務所では、勾留許可決定に対する準抗告が認められた実績がございます。
3 保釈のための活動
保釈が認められるまでの手続の流れを説明します。
まず、起訴されたら、弁護人は裁判所に対して「保釈請求書」を提出します(なお、保釈請求は、本人又はその弁護人以外には、両親や配偶者、兄弟姉妹も請求することができます。但し、恋人や友人には保釈請求権は認められていません)。
この保釈請求にあたって、定住する自宅があって生活の拠点があることや、逃亡しないように監督を誓約している身柄引受人の存在等を記載して逃亡のおそれがないことを主張したり、すでに捜査機関が証拠を確保しているため罪証隠滅のおそれがないこと等を主張します。
また、保釈請求をする際には、上述した身元引受人の存在は欠かせません。
この身元引受人には誓約書を書いてもらい、保釈請求書と一緒に裁判所に提出します。身元引受人には、家族以外の方がなることもありますが、監督の実効性がなければなりませんので、あまりに関係が薄い人や居住先が遠方のために監督が期待できない方は、身元引受人として不適当です。
裁判所は、弁護人等からの保釈請求を受け付けた後、検察官に対して意見を聴取します。
この検察官の意見や弁護人等の主張を踏まえ、裁判所が保釈を認めるかどうか、かりに保釈を認める場合に保釈保証金をどの程度の金額に設定するのか、保釈の条件をどのようにすべきかを判断します。
裁判所から保釈の判断が出されるまでの時間は一概に言えないのですが、1~3日程度かかります(事件の性質や裁判所や検察の都合等により、判断されるまで時間には幅があります)。
保釈保証金の金額は、犯罪の内容や被告人の経済力等を総合的に判断して決定されます。
例えば、犯罪が重大で、実刑判決が予想される場合にはそれだけ逃亡する可能性が高くなると判断される傾向にあるので、担保である保釈保証金の金額が高く設定される、ということになるので、なお、資産等も考慮するため、ニュースになるような大手企業の役員や芸能人の保釈保証金が数千万円から数億円とされることもあるのです。
多くの事件では150万円~300万円程度になることが多いと言われますが、事件により金額は異なりますので、ご参考程度にお考え下さい。
保釈保証金を裁判所に納めなければ身柄が解放されることはありません。
そのため、保釈請求する場合には資金を手元に確保しておく必要があります(すぐに現金が用意できないという場合には、立替制度等をご案内することもございます)。
そして、裁判所が保釈決定を出し、被告人側で保釈保証金を納付が完了した後、被告人の身柄が解放されます。
江畑 博之
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