投資詐欺被害の増加について 弁護士 江幡 賢

1 投資詐欺被害額4000億円超

一般の消費者に対して「元本保証」「必ず儲かります」「あなただけへのご案内です」などと言葉巧みに勧誘して投資を促し、いざ投資をすると、実際には儲けどころか元金も戻って来ずに姿をくらますという、いわゆる「投資詐欺」の被害が後を絶ちません。

先日、警察庁から、2020年中に摘発した投資詐欺事件(利殖勧誘事件)が38件で、被害額が統計史上最高額の4488億6802万円となったことが発表されました。

前年の被害金額が約1000億円であったのに対して、一年で約3450億も増加したとして、注意喚起が促されています。

2 投資詐欺とは?

投資詐欺の手口として、一般的に以下のものが挙げられます

① 未公開株

特定の会社の株式について、近々証券取引所に上場する予定であり、上場すれば高値が付くので、今のうちに買っておけば確実に上場後に値上がりするなどと投資を促すもの。

② 外国通貨

現在開発途上の国の通貨で、近いうちに大きな経済成長が見込めるため、今のうちに通貨を買っておけば、経済成長とともに通貨の価値が上がるなどと投資を促すもの。

③ テクノロジー

IPS細胞、自然発電、新薬の開発など、新しいテクノロジーの開発に関連して、新技術を開発する会社への投資や、知的財産権などへの投資を促すもの。

④ プロ向けファンド

金融庁に「届出」をした業者であることを利用して信用させ、投資を促すもの。

これは、一般消費者を対象とした投資の場合には、金融庁に「登録」しなければならないのに対し、プロ向けファンドの場合には、条件の緩い「届出」で足りることを利用し、消費者を信頼させて投資を募る手法の詐欺です。

実際には悪質なファンドであるにもかかわらず、金融庁に「届出」していることから、あたかも金融庁のお墨付きを得ているかのように装うことに加え、「プロ向け」を謳うことにより、高収益性・希少性を匂わす説明がなされることが多いようです。

近年、「プロ向けファンド」を一般消費者に対して販売することを禁止する法改正がなされ、現在は比較的厳しく取り締まられるようになりました。

⑤ 仮想通貨

近年、ビットコインをはじめとする仮想通貨の値上がりが注目されていることに伴い、投資セミナーなどで顧客を勧誘する手法の詐欺です。

仮想通貨は、各国の通貨や株式と比較して、責任を負う発行者や管理者が存在しないものも多く、そもそも仮想通貨自体が架空の物である場合すら少なくありません。

現在、仮想通貨と法定通貨の交換、想通貨同士の交換、利用者の金銭・仮想通貨を管理する業務を行うためには、金融庁の登録を受けることが必要とされています。したがって、業者などから仮想通貨の購入を勧められた場合には、少なくとも仮想通貨交換サービス業者としての登録を受けているかどうかを確認するようにしましょう。

3 投資詐欺にご注意

警察庁によれば、投資詐欺の被害額が増加した原因として、新型コロナウイルス禍における収入減や、株価の高騰などから、投資や資産運用への関心が高まったことなどが挙げられています。

過去には、磁器健康器具の預託商法で全国約1万人に2000億円の被害をもたらした事件や、加工食品のオーナー制度を謳い、全国約4万人に2000億円以上の被害をもたらした事件がありました。

当たり前の話ですが、投資で「必ず儲かる」ことはあり得ません。また、もし極めて高い確率で儲かるような儲け話があれば、人に勧める前に、自分が投資しているはずです。

もちろん、すべての投資が投資詐欺ではないとは思いますが、実際に投資をする前に、今一度、目の前の投資話が投資詐欺ではないかどうかをしっかりと確認するようにしましょう。

 

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江畑 博之

江畑 博之

新潟大学工学部卒 東北大学法科大学院修了 最高裁判所司法研修所修了後、弁護士登録

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