事件が警察から検察へと移り、最終的に検察官が「起訴」するか「不起訴」にするかを判断します。日本の刑事訴訟法では、「起訴独占主義」といって、検察官だけに起訴不起訴を決定できる権限が与えられています。
このコラムでは、この「起訴」「不起訴」とはどういう意味なのか解説します。
「起訴」とは
起訴するということは、検察官が裁判所に対して、裁判をひらいて事件を審理して被疑者を処罰して欲しいと求めることをいいます。裁判所に「起訴状」という書面を提出します。
検察官によって起訴されると、「被疑者」は「被告人」という立場になります(マスコミ用語では「被告」と言われます)。
「起訴」には、公判請求と略式請求の大きく分けて2種類に分かれます。平たく言うと、正式な裁判の手続きを行うのか、それとも簡易な手続にするのかという違いです。なお、「即決裁判手続」もあるのですが、別のコラムでご紹介しますのでここでは割愛します。
公判請求
テレビドラマでみるような法廷でひらかれる裁判を行うことです。
略式請求
比較的軽微な事案で罰金額50万円以下になる事案などの要件を満たした場合、書面により簡易な手続きとされる場合があります。
あくまで被疑者が同意した場合に限られますので、無罪を争っていたり、事実関係に争いがある場合には略式がとられることはありません。
「不起訴」とは
不起訴とは、検察官が起訴しない旨を決める処分のことをいいます。
不起訴処分となればそれにより刑事裁判が開かれない(公判請求も略式請求もされない)ことが決定し、事件終了となります。
これは「前科がつかない」ということを意味します。
不起訴の種類
不起訴には、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3つの種類があります。
嫌疑なし(けんぎなし)
「被疑事実につき、被疑者がその行為者でないことが明白なとき、又は犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なとき。」とされています。
つまり、犯人違いであるときや、その人がやった行為であっても犯罪に該当しない(それを裏付ける証拠がない)ときです。
嫌疑不十分(けんぎふじゅうぶん)
「 被疑事実につき、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なとき。」とされています。つまり、人違いではないけど、その行為が犯罪に該当するものであることを裏付ける十分な証拠がないような場合がこれにあたります。
起訴猶予
「被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないとき。」とされています。つまり、この人が犯罪をしたことは間違いないが、今回は初犯だったり、被害額が小さい(又は示談が成立している)等、あえて処罰を求める程度には達していないというような場合が該当します。
実務上、件数としては、この「起訴猶予」を目指して弁護活動をすることが多いです。
被害者がいる犯罪では示談を目指しますし、そうでない場合であっても、社会復帰後の更正環境の整備など行うことで起訴猶予を目指します。
弁護士に依頼するメリット
単に取り調べを受けるだけでは、起訴されてしまい、そのまま前科がついてしまう可能性があります。
弁護士に依頼することで、被害者に被害弁償、示談交渉を行うことが重要ですし、被疑者にとって有利な事情を検察官にアピールしていくことが必要不可欠です。
このような活動は弁護士でなければできませんので、まず弁護士にご相談ください。
事件規程
第75条 検察官は、事件を不起訴処分に付するときは、不起訴・中止裁定書(様式第117号)により不起訴の裁定をする。検察官が少年事件を家庭裁判所に送致しない処分に付するときも、同様とする。 2 不起訴裁定の主文は、次の各号に掲げる区分による。 (1)~(16) 省略 (17) 嫌疑なし 被疑事実につき、被疑者がその行為者でないことが明白なと き、又は犯罪の成否を認定すべき証拠のないことが明白なとき。 (18) 嫌疑不十分 被疑事実につき、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分なと き。 (19) 省略 (20) 起訴猶予 被疑事実が明白な場合において、被疑者の性格、年齢及び境 遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないとき。 |
江畑 博之
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