刑事事件とは、大まかにいえば、ある犯罪に該当する事実が発生した時に、国家機関(警察、検察)が犯人や犯罪の事実に関する証拠を収集し、その犯人に対する刑罰を定めることを言います。
例えば、銀行で1億円を強奪して逃走したという強盗事件があったとします。
この場合、警察がその強盗の犯人を追跡して特定します。
また、どういった犯行であったのか、犯罪被害額はどの程度だったのか等を調査し、犯罪事実を確定させます。
その後、検察官が起訴するかどうかを判断し、起訴(公判請求)した場合には、刑事裁判の中で、被告人が犯人かどうか、どのような犯罪を行ったのかを認定し、その被告人に対する刑罰(懲役〇年など)を言い渡すわけです。
このように、刑事事件においては、被疑者・被告人と国(警察、検察)が登場するわけです。
刑法や刑事訴訟法といった法律が適用されます。
なお、マスコミ用語で、逮捕された人のことを「容疑者」、起訴された人を「被告」と言い方をしますが、法律用語としては「被疑者」「被告人」と言います。
民事事件とは、基本的には私人間の権利義務の紛争に関する手続です。
上記の強盗事件を例に説明すると、銀行は1億円を盗まれたわけですから、1億円の損害が発生します(保険金等が払われていないという設定です)。
銀行は、犯人に対し、この1億円について損害賠償請求するのですが、「1億円の損害賠償請求権」という権利が問題となるわけです。
民事事件においても裁判をしますが、これは上記の刑事裁判と違って、有罪無罪を決めたり、刑罰の重さを決める手続ではありません。
民事裁判では、「1億円の損害賠償請求権」があるかどうかという点が審理されるのです。
そのため、裁判所の判決は、「被告は、原告に対し、金1億円を支払え」という判決になるのです。民法や商法、会社法、民事訴訟法といった法律が適用される分野です。
このように、刑事事件と民事事件とは、同じ事実をもとにするものであっても、その目的や手続、当事者が変わってくるのです。
刑事事件で被害者がいる場合、被疑者・被告人と被害者との間で「示談」をすることがあります。誤解されやすいのですが、この「示談」とは、あくまで被害者との間で行う和解のことで、民事事件の分野の話です。
被疑者・被告人と検察や警察とが示談をすることはありません。民事裁判では和解することはあるのですが、刑事裁判で刑罰について和解することはあり得ません。
江畑 博之
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