「横領(おうりょう)」とは?
横領とは、一言で言えば「他の人から預かっているお金や物を、無断で自分のものにしてしまう犯罪」のことです。
無断で自分のものにするという点では、「窃盗」と似ていますが、横領の場合は、自分が管理を任されていた(預かっていた)ことが要件になっています。
法律上、横領は大きく以下の3つに分類されます。
① 業務上横領(ぎょうむじょうおうりょう)
会社の経理担当者が、会社名義の口座から勝手にお金を引き出して私的に使ったり、会社の売上金を自分の財布に入れたり、従業員が会社の備品を勝手に売却し、その売却代金を自分のものにしたりする行為などです。
仕事としてお金や物の管理を任されていることを利用しての犯罪であり、社会的な信頼を大きく損なう行為であることから、横領の中で最も重く処罰されます。
② 単純横領(たんじゅんおうりょう)
友人から預かっていたものや借りたものを勝手に売ってしまったり、自分のものにしたりする行為です。
③ 遺失物等横領(いしつぶつとうおうりょう)
道で拾った財布や放置されている自転車を、警察に届け出ず、そのまま自分のものにしてしまう行為です(占有離脱物横領とも呼ばれます)。
今回は最もご相談が多く、刑罰も重い「①業務上横領」を中心に解説します。
横領がバレる理由
最初は「すぐに返せば大丈夫」「少しだけならバレないだろう」という軽い気持ちで横領に手を染めてしまうケースが多いです。
しかし、一度横領を始めると簡単に抜け出せなくなり、横領額が膨らんでいくケースが少なくありません。
横領はいつか必ずバレるのが現実です。
横領が発覚するケースは以下のようなものがあります。
① 会計監査や税務調査
横領がバレる最も代表的なものとして、社内の定期監査や、税務調査です。
定期監査とは、会社が一定の周期で、財務、業務プロセスなどの各分野について行なう監査のことです。
税務署の税務調査とは、会社が行なった税務申告の内容の正確性について、税務署や国税局が確認するための調査です。
「帳簿を細かく作成しているから大丈夫」と思っていても、公認会計士や税理士などの専門家や、税務署・国税局の調査官などのプロには見破られてしまいます。
また、税務署などが、納税者本人ではなく、取引先に対して行なう反面調査によって、横領が発覚することもあります。
売上高と入金額の不一致、不自然な経費の計上、使途不明金などの横領の形跡は、精査する過程で明らかになる可能性が高いです。
② 人事異動、退職
「自分しか経理を担当していないからバレないだろう」と思っていたしても、会社組織であることから、定期的な人事異動や退職は避けられません。
異動や退職があった後は、後任者が経理業務を引き継ぐことになりますが、その際に
不自然なお金の流れや不一致などが発見され、発覚へと至ります。
その後、過去の経理処理も調べられ、過去の横領が次から次へとバレることになります。
③ 周囲の違和感や内部告発
横領により得られたお金は人の金銭感覚を麻痺させます。
最初はバレないようにビクビクしていても、何度か横領が成功し、大金を手に入れると、本来の収入では手の届かない高級な物の購入など、散在が始まります。
「急に羽振りが良くなった」「収入に見合わない高級車やブランド品を買っている」といった周囲の違和感から、匿名で通報(内部告発)され、隠密に社内調査が進められ、横領が発覚するケースも少なくありません。
横領が「バレそう」「バレた」ときに、絶対にしてはいけないこと
会社から不審点を追及されたり、近々監査が入ることが決定したりして、「これ以上隠し通せない」とパニックに陥ったとしても、絶対にしてはいけないことがあります。
万が一これを行なってしまうと、後に警察が横領事件について捜査を開始した際、逃亡や証拠隠滅の恐れがあると判断され、逮捕されるリスクが極めて高くなります。
① 証拠の隠滅や改ざん
経理データの消去、請求書・領収書の破棄、帳簿の改ざんによる辻褄合わせなどの行為は絶対にしないでください。
現代のデータ復元技術や銀行の取引履歴などの客観的な証拠の前では、そのような小細工は無駄に終わります。
そればかりか、「悪質な証拠隠滅を図った」と判断され、刑事責任が重くなるだけです。
② 嘘や責任転嫁
「システムの不具合」や「部下の処理ミス」といったその場しのぎの嘘や責任転嫁は、会社の不信感をさらに強めるだけです。
結果として、徹底的に調査が行われ、即時の懲戒解雇や刑事告訴など、より厳しい結果を招くことになります。
③ 無断欠勤、音信不通、逃亡
横領がバレそうまたはバレた際に、会社を無断で欠勤したり、音信不通となって引きこもったり、遠方へ逃げ出したりする行為は最悪の選択肢と言わざるを得ません。
会社側は、「話し合いによる解決は不可」と見なし、直ちに警察へ被害届や告訴状を提出します。被害届などを受領した警察側も、「逃亡の恐れあり」として逮捕に動くため、逮捕状を手にした警察官が自宅にやってくるという、最悪の結果を自ら招くことになります。
横領がバレそう・バレたときにまずすべきこと
最悪の結果にならないように、取るべき行動は以下の3点です。
① 事実関係の正確な把握
まずは、「いつ」「いくらを」「どのような方法で横領し」「何に使ったのか」を、覚えている範囲でノートなどに書き出してください。
自身の手で客観的な事実を整理することが、今後の弁護活動や会社への誠実な説明への重要な第一歩となります。
また、正確に事実関係を把握していないと、会社側の調査が進んだ際、自分が関わっていない使途不明金まで横領したと疑われて、不当に重い責任を負わされるリスクがあります。
② 被害弁償の原資の確保
横領事件において、最も重要なのは「被害弁償」です。
まずは、手元の預貯金、売却可能な資産(車やブランド品など)、親族から借りられる宛てがないかなど、返済に充てられる原資がいくらあるかをすぐに確認してください。
仮に十分な原資が確保できない場合、今後の支払い計画(分割弁済案)を練る必要があります。
自身の収入を踏まえ、「毎月いくらずつ、いつまでに完済するか」という現実的な計画を立ててください。
一括での返済が難しくても、誠実で現実的な支払い計画を提示することができれば、会社側が分割払いに応じてくれる可能生が残されます。
③ 一刻も早く弁護士に相談する
会社から不審点について呼び出しを受けていたり、社内調査がすでに始まっている場合、まさに一刻を争う状況です。
会社側との話し合いに一人で臨むのは極めてリスクが高いです。
話し合いの前に、刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に一刻も早く相談し、今後の具体的な対応方針について、専門的なアドバイスを受けてください。
横領がバレた後に追及される責任や負う制裁
① 刑事処分(警察への被害届・告訴状の提出)
会社が警察に対し、横領の事実について被害届や告訴状を提出すると、刑事事件として捜査が開始されます。
仕事として管理しているお金や物を横領した場合は、上述した「業務上横領罪(刑法253条)」に問われることになります。
刑事事件として捜査が開始された場合、警察・検察から取調べを受ける他、逮捕されることもあります。また、後述するとおり、業務上横領の法定刑は10年以下の拘禁刑しかなく、罰金刑がないため、刑事処分として刑務所に収監される可能生があります。
② 民事上の請求(損害賠償請求)
会社から、横領した金額全額の返還を求められます。
もし一括で支払えない場合には、分割での支払方法について会社と協議することになります。
協議が不調に終わった場合、会社から民事訴訟を起こされる可能性があります。仮に、会社の請求を認める判決が下された場合、自宅などの不動産、預貯金、再就職後の毎月の給与の一部などを差し押さえられるリスクがあります。
また、入社時に身元保証人になっている家族や親族に対しても、会社から損害賠償請求をされる可能生もあります。
③ 社内処分(懲戒解雇・退職金の不支給)
就業規則に基づき、最も重い処分である「懲戒解雇」となる可能性が極めて高いです。懲戒解雇処分を受けると、退職金は支給されないケースがほとんどです。懲戒解雇になった場合は、今後の転職活動おいて重大な不利益を被ることになります。
④ 実名報道のリスク(社会的制裁)
被害額が数千万円と高額な場合や、公的な機関・有名企業での横領などの事情があり、社会的な影響が大きいと判断された場合は、逮捕時や検察庁に事件が送致される際にテレビや新聞、ネットニュースなどで実名報道されるリスクがあります。
一度ネットに名前が掲載されてしまうと、いわゆるデジタルタトゥーとして残り続け、本人だけでなく家族の人生にも大きな支障をきたします。
最悪の結果を避けるためにできること
横領事件における最悪の結果とは、「警察に逮捕・勾留されて長期間身柄を拘束され、裁判で実刑判決(刑務所への収監)を受けること」です。
この結果を回避するためにできる唯一にして最善の防衛策は、刑事告訴される前の示談成立です。
会社側も、できれば警察沙汰にして大ごとにしたくない、あるいは「刑事告訴しても、犯人が刑務所に行くだけでお金が返ってこないなら意味がない」と考えているケースも少なくありません。
警察の捜査が開始される前の段階で、弁護士を間に挟んで被害金の支払方法を誠実に交渉し、示談を成立させることができれば、会社から刑事告訴されるのを防げる可能性があります。
警察に被害届・告訴状が提出されなければ、当然、逮捕されることも前科がつくこともありません。
刑事告訴がなされる前に示談を成立させることが、最悪の結果を回避し、早期の社会復帰を実現するための最も確実なルートです。
業務上横領罪の「処分の相場」と「刑罰の重さ」
業務上横領罪は、日本の刑法の中でも重い罪の一つに分類されています。
【刑法第253条(業務上横領)】
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
注目すべきは、「罰金刑がない」という点です。つまり、起訴されて裁判で有罪になれば、処分は刑務所などの刑事施設に収容する刑罰である「拘禁刑」しかありません。刑事裁判で執行猶予付きの判決が下されなければ、即座に刑務所へ行くことになります。
処分(起訴か不起訴か、執行猶予か実刑か)を分ける最大の境界線は、「被害額の大きさ」と「被害弁償(示談)の有無」です。
被害額が数千万円であっても、被害者との間で示談が成立し、被害額が早期に支払われれば、不起訴処分となることもあります。
他方、被害額が少額であっても、示談ができない場合は、起訴される可能生が高くなります。被害額が数百万円である場合は、初犯であっても実刑判決になるリスクが高いです。
※上記はあくまで一般的な相場です。同種前科の有無や横領の期間、手口の悪質さ、被害者の処罰感情などにより、処分結果が変わる可能性があります。
横領事件において、今すぐ弁護士に依頼すべき「5つの必要性」
横領がバレた、あるいはバレそうな段階で、当事者だけで解決しようとするのは不可能です。一刻も早く弁護士に依頼すべき理由には、以下の4つのメリットがあるからです。
① 会社側との「交渉の窓口」になれる
横領の被害に遭った会社の経営陣は、激しい怒りや裏切られたという強い感情を抱いています。このような感情をいただいた被害者と本人が直接交渉しようとしても、感情的に責め立てられたり、過大な要求を突きつけられたりして、建設的な話し合いにはならないケースがほとんどです。
弁護士が代理人として間に入ることで、会社側と適度な距離を保ち、冷静な話し合いの場を設けることが可能です。弁護士が、あなたの現在の資産状況や今後の収入見込みを分析し、あなたにとっても生活が破綻しない、現実的な返済計画を策定した上で、解決に向けた前向きな交渉を進めることができます。
② 「逮捕」を阻止し、日常生活を守る
すでに警察が介入している場合でも、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
弁護士は警察などの捜査機関に対して、「本人は深く反省していること」「証拠隠滅や逃亡の恐れはないこと」とする意見書や証拠を速やかに提出します。
この迅速な働きかけによって、逮捕による身柄拘束を回避し、自宅から警察署に通って取り調べを受ける「在宅捜査」を目指すことが可能です。日常生活への影響を最小限に抑えることで、学校や仕事を辞めずに済む可能性を残すことができます。
③ 不起訴処分の獲得
横領事件にあたってもっとも重要なことは、検察官が起訴・不起訴の最終判断を下す前の示談成立です。
弁護士は、迅速に被害者との交渉を行ない、被害者との示談成立ができるよう、全力を尽くします。仮に、示談が成立できる状況になった場合には、示談書の中に「被害者は加害者を許す(告訴を取り下げる)」という旨の「宥恕(ゆうじょ)文言」を盛り込めるよう、被害者に働きかけます。
当事者間で誠実な解決がなされたと認められれば、不起訴処分となる可能性が格段に高まります。不起訴になれば、前科がつくことはありません。
④ 執行猶予付きの判決の獲得
もし、被害額の大きさや支払い可能なお金が十分にないなどの理由から、被害者との示談成立が難しく、起訴(裁判)を避けられないケースであっても、裁判に向けて全力でサポートします。
裁判では、本人の深い反省の態度を示すことはもちろん、ご家族の協力による監督体制を整え、無理のない分割返済計画などを裁判所へ示します。
これらの主張により、裁判所に対して、「刑務所に収監するのではなく、社会の中で更生させるべきである」と強く訴えかけ、執行猶予付きの判決の獲得(実刑の回避)に全力を尽くします。
横領の問題は時間との勝負です。今すぐご相談ください
横領事件は時間との勝負です。「放置して状況が良くなること」は決してありません。会社に横領がバレることを恐れて問題を先送りにすればするほど、被害額は大きくなり、最終的に発覚したときの会社の怒りは増大し、刑事告発を免れることは難しくなります。
重要なのは、「会社にバレる前」や「警察が介入する前」の段階で、自首や示談の交渉へ動き出すことです。このタイミングで弁護士が介入できれば、逮捕や実刑という最悪の結果を避けられる可能生が上がります。
当事務所では、これまで多くの業務上横領事件で、不起訴処分や在宅での示談成立を勝ち取ってきた豊富な実績があります。
どのような段階であっても、当事務所はあなたの味方となり、最善を尽くします。秘密は厳守いたしますので、まずは一刻も早く、当事務所へご相談ください。

運営:弁護士法人美咲(新潟県弁護士会所属)
