雇用調整助成金を不正受給してしまった・・・逮捕されますか?どのような刑罰になりますか?
新型コロナウイルスの流行により、事業者のあらゆる活動が制約されました。このような事業者を経済的に支援するため、様々な助成金や補助金の制度を設けました。主なものとしては「持続化給付金」や「雇用調整助成金」、「中小企業緊急雇用安定助成金」等があります。
このような助成金等を不正受給するという事件が相次いでおり、報道されるケースもあります。
この記事では、「雇用調整助成金」や「中小企業緊急雇用安定助成金」を不正受給した場合に、不正受給をした企業に対してどのような制裁があるのか、また、どのように対応したらよいのか等を弁護士が解説します。
雇用調整助成金とは
雇用調整助成金について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_20200515.html
雇用調整助成金は、「経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業、教育訓練、出向に要した費用を助成する制度」です(引用:厚労省HP)。
売上等が前年同期に比して10%以上減少し、一定の雇用調整を行った場合に受給を申請することができます。
雇用調整助成金や中小企業緊急雇用安定助成金を不正受給した場合にどのような制裁がありますか?
この雇用調整助成金については売上等が減少したようにみせかけたり、また、中小企業緊急雇用安定助成金については、実際には従業員を休業させていないにもかかわらず休業させたことにしたりして、不正に受給するケースが発生しています。
①詐欺罪が成立する(刑法246条)
不正受給は、虚偽の事実をもって金銭を取得していますから、刑法の詐欺罪が成立します。これは雇用調整助成金等を管轄する厚生労働省のホームページにも、不正受給には明詐欺罪が成立すると明記しています。
詐欺罪が成立する場合は10年以下の懲役と重い罰則が定められています。
②公表される
厚生労働省は不正受給に対しては厳しく対応しており、「名称」、「代表者名」、「不正受給に関与した役員等の氏名」、「事業概要」、「不正受給に係る事業所の名称」、「所在地」等の情報が公表されます。株式会社東京商工リサーチの調査によれば、雇用調整助成金の不正受給公表は全国で516社、受給総額は163億円に上ると発表されています。
【東京商工リサーチ】
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197767_1527.html
令和5年4月以降については以下の基準に基づき公表されます。
【令和5年4月以降の不正事案の公表基準】
①不正受給による支給取消額及び不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円以上の場合 ⇒公表対象。ただし、労働局の調査前に不正受給について自主申告を行い、かつ、返還命令後1か月以内に全額納付した場合であって、不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大又は悪質でないと認める場合は公表しないことができる。
②不正受給による支給取消額及び不正を理由として不支給決定を受けた支給申請額の合計額が100万円未満の場合 ⇒公表対象外。ただし、不正の態様・手段、組織性等から判断して、管轄労働局長が特に重大又は悪質であると認める場合は公表対象とする。
③社会保険労務士や代理人が不正に関与した場合 ⇒金額、返還の有無にかかわらず公表対象 引用:厚生労働省HP |
新潟県内においても複数の事業者による不正受給が公表されています。
【新潟県内の公表事例(新潟労働局HPより)】
https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin_00005.html
③今後助成金等を申請しても支給されない
不正受給が発覚した場合のペナルティとして、雇用保険証施行規則第120条の2に基づき、5年間(不正受給した金額を全額納付していない場合は納付までの期間)、今後助成金等を申請しても受給することができなくなります。
④不正受給した金額に加え、延滞金(法定利息)と損害賠償金を支払わなければならない
「不正受給しても、ばれたらその金額を返せば大丈夫」と考えるのは間違いです。不正受給した金額を全額納付することに加え、受給から支払いに至るまでの延滞金(法定利率3%)、および、返納金の2割に相当する損害賠償金を支払う必要があります。
雇用調整助成金は数百万円以上を受給することが多いため、この延滞金や損害賠償金の額も多額になり、企業にとってこれを全額返納することはかなりの負担となってしまいます。
雇用調整助成金等を不正受給した場合はどのように対応すればよいですか?
雇用調整助成金等を不正受給した場合は、労働局から指摘される前に自主的に申告することが重要です。労働局から指摘された後では、公表を回避することができなくなってしまいます。
また、労働局による調査に対しては誠実に協力しましょう。
そして、労働局から指示された返納額や延滞金等については、期限内に納付することはもちろんのこと、できる限り一括で返納することが望ましいです。
弁護士法人美咲総合法律税務事務所にご相談ください!
雇用調整助成金等を不正受給した場合、自ら労働局に対して出向いて説明することについて、恐怖や不安を感じるのは無理のないことです。
弁護士法人美咲総合法律税務事務所では、不正受給をした事業者の方の労働局への自主申告をサポートいたします。
弁護士法人美咲総合法律税務事務所のサポートは以下のような流れで実施します。
①法律相談
まず不正に申請をしたときの資料等を弁護士がチェックします。
②自主申告への同行
(新潟市内の事業者の場合)新潟労働局助成金センターにあらかじめ弁護士が電話をして、自主申告をする旨を伝えた上で、担当者との面談日程調整を行います。
指定された日時に、弁護士と依頼者の方とで労働局へ訪問し、担当者に事情を説明します。
③労働局とのやり取り
労働局からは資料の提供を依頼されますから、弁護士がチェックをした上で、書類を労働局に送付します。
また、労働局から書面等が届いた場合は、弁護士が内容をチェックをして依頼者の方に説明いたします。もし書面に修正する必要があれば、弁護士が労働局担当者と協議をして修正を求めていきます。
すべての資料の提出等を完了すると、労働局から返納する金額等の連絡があり、その納付書が準備されます。
④返納
労働局が準備した納付書を使って、不正受給した金額等を振り込みなどで支払います。
弁護士費用はどれくらいかかりますか?
内容 | 費用 |
自主申告サポート | 275,000円~(税込) |
弁護士法人美咲総合法律税務事務所では、自主申告サポートは275,000円~と設定しております。
初回相談は無料ですので、お気軽にお問合せください。
江畑 博之
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