青少年の保護や有害環境浄化などを目的として、各自治体において青少年健全育成条例が制定されています。新潟県においては「新潟県青少年健全育成条例」が制定されていますので、その内容を解説します。
1 どのような行為が規制されているのか?
新潟県青少年育成条例では、主に以下のような行為が制限、禁止されています。
深夜における青少年の外出の制限 |
青少年による深夜(午後11時から翌日の午前4時まで)のカラオケボックス等への立入り |
青少年への有害図書類(卑わいな写真や絵)の販売、貸付、見せる行為、聞かせる行為 |
青少年への「有害がん具(大人のおもちゃ、使用済み下着、ダガーナイフ、バタフライナイフなど)」の販売 |
青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為(淫行) |
自画撮り画像の要求行為 |
2 青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為(淫行)について
特に相談が多いケースは青少年とのみだらな性行為やわいせつ行為(淫行)です。
この「みだらな性行為」とは何をいうのかという点について、新潟県青少年育成条例では規定がありませんが、最判昭和60年10月23日では、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為の、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似制為というと判断されています。また、同判決では、婚約中であるとか、婚約に準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等は処罰対象にはならないとされています。
なお、新潟県青少年健全育成条例に関しては、古い審判例ですが、お互いが好意を抱いて複数回デートを重ねて接吻、乳房の愛撫をした事案について、「お互いに好意を抱いていたことは明らかであり、そのような人格的交流を前提として行われた接吻、乳房の愛撫の程度の行為が、本条例にいう「わいせつな行為」に該当すると解することは相当でない。」と判断したものがあります(新潟家庭裁判所昭和54年10月1日決定・家庭裁判月報32巻10号104頁
3 「青少年」は何歳の人?
「青少年」とは、「18歳に達するまでの者」とされています(14条1項)。注意が必要なのは、女性のみならず、男性も含まれるということです。ただし「婚姻した女子を除く」とされています。
上記規制対象の行為は、相手が18歳未満であることを認識していなければ、故意がないとして処罰の対象となりません。
しかし、青少年に対するみだらな性行為やわいせつ行為をすることについては、相手の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることはできません。つまり、単に「年齢を聞いていなかったから知らなかった」というだけでは、たとえ18歳未満であることを知らなかったとしても、処罰の対象となってしまうのです。
もっとも、18歳未満であると知らなかったことについて過失がなかった場合は、例外的に処罰を免れます。例えば、身分証明書を提示してもらったが、その身分証明書が偽造されたものであったり、18歳以上の者のものであった場合などが考えられます(もちろん、当該身分証明書が偽造、あるいは他人のものであると疑うような事情が存在しないことが前提です)。
4 刑罰の重さは?
各行為によって刑の重さは異なります。
有害図書類の販売 | 20万円以下の罰金 |
有害がん具の販売 | 20万円以下の罰金 |
みだらな性行為やわいせつな行為 | 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
自画撮り画像の要求行為 | 20万円以下の罰金 |
5 もし自分が違反したら?
まだ捜査段階で事実が発覚していない場合であっても、不安に苛まれるようであれば自首をすることも考えられます。この場合、弁護士が同行することも可能です。
かりに、青少年とみだらな性行為をしたとして逮捕されたとしても、自分は「18歳以上であると信じたことについて過失はない」と考えているのであれば、その過失がなかったことを基礎づける様々な事実関係を立証していく必要があります。
江畑 博之
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